FAST ProjectFAST実験

Fluorescence detector Array of Single-pixel Telescopes (FAST) 実験は、次世代の地上での極高エネルギー宇宙線観測計画で、極高エネルギー宇宙線の観測数の飛躍的向上と、未だかつて観測されていない極高エネルギーのニュートリノやガンマ線といった中性粒子の初観測を目指します。

この実験では極高エネルギー宇宙線天文学を確立させ、宇宙線の起源を解明し、加速機構や地球までの伝播過程を明らかにする計画です。そのために現在の「ピエールオージェ実験」やテレスコープアレイ実験の4倍拡張を目指す「TA×4」の計画での有効検出面積である3000km2を一桁向上させ、極高エネルギー宇宙線の統計量を有意に増やします。

新型大気蛍光望遠鏡の開発

これまでの大気蛍光望遠鏡や地表粒子検出器アレイを用いた観測手法で、一桁大きい有効検出面積を達成することは予算・管理の面から現実的ではないという大きな問題点があります。そのため、極高エネルギー宇宙線をより効率よく捉えるための新しい技術開発が大きな課題となっています。

FAST実験では、その新しい技術として大気蛍光望遠鏡を地表粒子検出器アレイのように等間隔でアレイ状に配置し、複数台での極高エネルギー宇宙線の同時観測を考えています。それによって、検出器の間隔を飛躍的に大きくすることができ、広大な有効検出面積を達成できます。

現在、この目的のために最適化した新型大気蛍光望遠鏡の開発を進めています。これまでより小型の光学系を使い、焦点面には大口径の光電子増倍管をわずか4本で構成しています。これによって大幅なコストダウンを達成し、アレイ状に検出器を設置することで有効検出面積を飛躍的に増加させます。

つまり、小田氏・菅氏が提唱し、棚橋氏らが初観測を達成するという日本人主導で始まった大気蛍光望遠鏡の技術を、次世代実験のために最適化した新型大気蛍光望遠鏡を開発することが我々の研究です。

プロジェクトメンバー

大気蛍光望遠鏡の比較

現在の大気蛍光望遠鏡の光電子増倍管

現在の大気蛍光望遠鏡は、大型の鏡と数百本の光電子増倍管によって宇宙線の高精度測定を達成しています。

新型大気蛍光望遠鏡の光電子増倍管

FAST実験の新型大気蛍光望遠鏡では、小型の光学系とわずか4本の光電子増倍管によって大幅なコストダウンを目指します。さらには次世代の大規模実験を見据え、ソーラーパネルで充電して自動でデータ収集を開始できる完全自立型の検出器としての運用実績を積みます。

FAST実験で期待される信号

20 km 間隔でアレイ状に新型大気蛍光望遠鏡を設置し、極高エネルギー宇宙線から期待される信号をシミュレーションを用いて見積もっています。離れた3地点で観測された宇宙線信号の時刻情報と波形情報から、どのエネルギーの宇宙線がどの方向から来たのかを再構成します。

新型大気蛍光望遠鏡を20 km 間隔で並べ、有効検出面積 37,500 km2 で定常観測を続けたときの極高エネルギー宇宙線への感度(exposure)を示しています。次世代の極高エネルギー宇宙線観測実験であるFAST実験では現在の統計量を一桁以上更新し、極高エネルギー宇宙線の起源を解明します。

FAST実験のプロトタイプ測定

FASTのコンセプトが宇宙線観測に使えるかどうかを確認するためのテスト観測を実施しました。テレスコープアレイ実験サイトにある光学系を使い、その焦点面に大口径望遠鏡を設置、極高エネルギー宇宙線からの信号が見えるかを検証しました。結果、16事象の候補事象が見つかり、FASTで宇宙線を観測できることを確かめたのです。

テスト観測の様子

もっと詳しくFAST実験について知りたい方は

より詳しい情報は News Publications にてご覧いただけます。本サイトでは最新情報を随時更新していく予定です。また質問などがあればお気軽に お問い合わせ いただければと思います。